STORIES

モノトーンで描き出す、境界線のない世界。Chocomooインタビュー
ポップなキャラクターたちをモノトーンのタッチで描き出す、イラストレーターのChocomoo(チョコムー)。 海や陸の生き物、植物や楽器など、本来なら交わることのない存在たちが、作品のなかでは軽やかに共存し、独自の世界をつくりあげている。 その表現は国内外で高く評価され、これまで数多くのアーティストやブランドとのコラボレーションも手がけてきた。 幼少期の原風景から現在の制作まで、その歩みを聞いた。 京都で育んだ、和の文化 ー 京都ご出身とのことですが、幼少期の体験で今も影響を与えていると思うことはありますか? 京都では、寺社仏閣がとても身近な環境で過ごしました。また子どもの頃から書道を習ったり、和太鼓も長く続けていました。当時は意識していなかったのですが、今振り返ると、そうした和の文化にとても影響を受けていると感じます。特に書道は、一枚の紙の中で全体のバランスを見ながら一発で描く感覚が身についたので、現在のライブペイントや画面構成にもつながっていると思います。あと父方の祖父が着物の絵描きだったんです。祖父の家に行くと凄い量の筆が並んでいて。小さい頃から絵を描くこと自体が好きだったのは、 今思えばDNAで受け継いでいるものなのかもしれません。 ニューヨークで見つけたイラストレーターとしての道 ー イラストレーターとして活動をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。 初めてニューヨークを訪れたときですね。当時ヒップホップに夢中で、ニューヨークに行こうと決めました。それまで京都から出たこともほとんどなかったんですが、渡航費を貯めて、思いきって行ってみました。 ニューヨークでは、街中のグラフィティやストリートカルチャーを目の当たりにして、京都とはまったく異なるエネルギーに衝撃を受けました。そんなある日、公園でスケッチブックに絵を描いていたら、通りがかりの人に「僕のお店で絵を飾らないか」と聞かれたんです。さっそくキャンバスを買いに行って、絵を描いて持って行ったら、本当に飾ってもらえて。しばらくして作品が売れたと連絡が来たときは、信じられませんでした。そのとき初めて、デザインやイラストで生きるという選択肢があることを実感したんです。そこからブログに作品を載せ始めたのが、活動の始まりです。 ー「Chocomoo」という名前の由来を教えてください。 ニューヨークに滞在していた頃、私はコーヒーが飲めなくて、いつもチョコレートドリンクを飲んでいたんです。その姿を見た友人が、スパイク・リー監督の映画『クロッカーズ』の登場人物になぞらえて「Chocomoo」と呼び始めたのがきっかけです。響きも気に入って、そのまま活動名として使うようになりました。 モノトーンで描く境界線のない世界 ー ご自身の表現スタイルはどのように作られていったのでしょうか。モノトーンの表現にこだわる理由はありますか? 書道の墨の世界と、子どもの頃に見ていた白黒時代のディズニーアニメなどの影響が大きいと思います。自分自身はカラフルな作品を見るのも好きなのですが、不思議と頭の中に浮かぶイメージは白黒なんです。モノトーンだからこそ、見る人が自由に色や物語を想像できる余白が生まれるとも感じています。 ー 現実では共存しないようなモチーフたちがともに描かれているのが印象的です。 実際には出会うことのないような組み合わせの生き物たちが、同じ空間で楽しそうに空間を共有している情景が好きなんです。海の生き物と陸の生き物、植物や楽器など、普段なら交わらない存在が一緒にいることで生まれるワクワク感があるというか。子どもの頃から、異なるキャラクターが一堂に会するような世界観に惹かれていたのもあるかもしれません。 ー それぞれのキャラクターにはストーリーや設定があるのでしょうか。 実はあまり決めていません。名前があるのもハート形のキャラクター「ドントタッチくん」くらいです。どんな場所なのか、何を話しているのか、見る人が自由に想像してくれたら嬉しいですね。同じ作品でも、その日の気分や見る人によって物語が変わるところが面白いと思っています。 描くことの楽しさを作品に ー 制作はどのように進めていますか? 下描きはほとんどしません。まず大きなモチーフを描いて、そこから空いたスペースを見ながらキャラクターを足していきます。余白を意識する感覚は、書道の影響もあると思います。描いている時は無心で、とにかくバランスを見ながら線を重ねています。その時間が純粋に楽しいんです。... 続きを読む...
「はずれ者」たちがつどう、もうひとつの居場所。櫻井万里明インタビュー
家族写真のような構図でたたずむ、種も性別も判然としない存在たちを描きだす櫻井万里明。ボールペンの一本の線から生まれる作品には、どこかなつかしさが漂う。 by GASBOOKでは、幼少期の記憶から現在の制作哲学まで、話を聞いた。 色鉛筆から生まれた色彩感覚 ーまず、絵を描き始めた頃のお話を聞かせてください。 福井県で母と三つ子のきょうだいとともに育ちました。きょうだい仲はとても良くて、今も交流があります。絵を描くのが好きで、ずっとチラシの裏に描いていました。小学校では、誰かが落としたままの色鉛筆を、落とし物ボックスからもらって描いていたんですが、持ち主があらわれない色、つまり人が大事にしない色って肌色や灰色みたいな地味なものが多くて。そこに、たまに友達がくれる鮮やかなオレンジやピンクを少しずつ足していくことをしていました。地味な色と鮮やかな色のバランス感覚は、あの頃に身についたものだと思っています。 ー書道もされていたと伺いました。 自宅の向かいに書道の先生が住んでいて、小学校1年生から高校に上がるまで習っていました。先生はいつも、筆の力加減や、止め・はね・払いの話、そして画面の余白の話をしていて。人が書の前で立ち止まるのは、その余白が効いているからなんだと教えられました。今も絵の中にあえて未完成な部分を残すときは、この言葉を思い出します。 何も持たなくてもできるもの ー多摩美術大学に進学されていますが、学生時代についても教えてください。 大学2年から4年まで、実はラップをやっていました。高校の頃からヒップホップが好きで、大学に入ってから、何も持っていなくてもできるものを突き詰めようと思って始めたんです。ライブに出たり、リリックを書いたりしていました。その頃、自分のライブのフライヤーやポスターを貼ると、持ち去られてしまうことがよくあって。それがきっかけで、もしかしたら絵の才能があるのかもしれないと思うようになりました(笑)。 「はずれ者」たちのもうひとつの居場所 ー性別や種がはっきりしない、独特の存在を描かれていますが、この着想はどこから来ているのでしょうか。 自分の作品のコンセプトって、「はずれ者」が第二の居場所を作って、それが中心になって人が集まってくる、というものなんです。幼少期の体験とつながる、誰かに大事にされなかった色だったり、主役になれなかったものだったり、いろんなジャンル分けの中からはずれてしまったものを、あえて描く。それが結果的に強さになったり、誰かを包み込めるような大きな優しさになったりすると、私は信じているんです。また、高校生の頃に観た伊丹十三監督の映画『タンポポ』にも影響を受けました。脇役や画面の端にいる人物を、垣根を超えてちゃんと生きている魅力的な人物として描いていて。自分は映画を作ろうとは思わなかったけれど、隅にいる人をないがしろにしない仕事がしたいと、あの時から思っています。その考え方を絵で表現できないかと考え始めたのが、今の活動の出発点です。 “家族”という普遍のテーマ ー家族というテーマを繰り返し描かれている理由を教えてください。 小学校の家庭科の教科書に載っていた、“家族団らん”の様子のイラストが、自分の家庭とはまるで違って見えたのが原点です。もっと器の大きい絵があってもいいんじゃないかって、ずっと考えていました。それで今、種も性別も血縁もあえてはっきりさせない存在たちを描いています。わかりにくさを大事にしています。想像を超えるものを描かないと、自分たちの思い込みは崩れないから。この曖昧さは、見る人が自分の知る誰かを重ねやすくするための、意図的な余白でもあります。 ー鑑賞者からよく聞く感想はありますか。 「懐かしいのに、見たことがない」という感想を、本当によく言われます。特定のキャラクターやアニメーションを参照しているわけではなくて、におい、手触り、空気の柔らかさといった感覚的な記憶を、絵の中に少しずつ折り込んでいるからだと思います。 《ハグ》シリーズと、日常の延長線上にあるもの ー「ハグ」をテーマにしたシリーズについても教えてください。 性別も種の違いも、言葉の境界すらも超えて伝わる、ノンバーバルなコミュニケーションである抱擁を描いた作品群です。母の日・父の日をテーマにした展示のために描いた作品で、肌の色の異なる存在や、養子縁組で結ばれた関係など、多様な家族のかたちを意識して制作しました。「これが正解」という唯一の家族像を提示しないことを、大事にしています。作品のなかには言葉は登場しないのですが、観たあとに、誰かに「ありがとう」と言いたくなるような、誰かに愛を伝えたくなるようなイメージで描きました。 ー作品が誰かの手元に届くことについてはどう考えていますか。 家族として迎え入れてもらうような感覚に近いと思っています。作品が、その絵を大切にしてくれる人の手元まで届くところまでが、自分の制作の一部だと思っていて。展示のたびに、一点一点にA4サイズの短いプロフィール、いわば作品の「生い立ち」を用意して配っているんですが、購入後にこの裏話を知って、より作品を好きになったと言ってくださる方がたくさんいます。 ー絵画というかたちにこだわりはありますか。 すごく重要です。家族写真のような構図で切り取ることで、鑑賞者はその四角の外側を想像しやすくなる。このトリミングの効果はまだまだ掘り下げられると思っています。「ハグ」シリーズで使った丸いキャンバスも、家族が集まって結ばれる、円卓のようなイメージから生まれたものです。 ー作品を通して伝えたいことはありますか。 みんなが知っている、日々の生活の延長線上にあるものとして自分の作品があることで、見る人の想像がほんの少し広がればいいなと思っています。あとは、あったかい愛だったり、想像することの楽しさだったり、考えるきっかけというものを作品を通して返していきたいと考えています。 続きを読む...
今この瞬間を生きる猫たちを描く、カムウェイ・フォン インタビュー
マレーシア出身のアーティスト・カムウェイ・フォンが描く猫といった動物たちの緻密で繊細な線描画は、世界中の愛猫家をはじめ多くのファンから愛されています。by GASBOOKではそんな彼に、作品づくりのプロセスや猫に囲まれた暮らし、そして日本から受けるインスピレーションについて話を聞きました。 続きを読む...
日本の陶を再解釈する、安井ちさと
By GASBOOKは、2025年4月にCALM & PUNK GALLERYにて開催された安井ちさとの個展「Whereabouts - In a Liminal State」にて発表された作品を展示いたします。 続きを読む...