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FEATURE

STORY OF "YUNI YOSHIDA WORKS 2007-2019"

STORY OF "YUNI YOSHIDA WORKS 2007-2019"

ファッションやコスメ、CDジャケット、商業施設などの広告ビジュアルを手がけ、その逸脱したセンスとファンタジックかつユーモラスな世界観で多くの人々を魅了し続けているアートディレクターの吉田ユニ。2019年11月に開催したラフォーレミュージアム原宿での大規模な個展には、約3万6千人の来場者が駆けつけた。個展開催に合わせて製作した作品集『YUNI YOSHIDA WORKS 2007-2019』は即完売し、増刷。国内外にファンを増やし続ける吉田ユニに、作品集制作に込めた想いや創作の原点、今後の展望などを聞いた。

個展会場で完売となった作品集『YUNI YOSHIDA WORKS 2007-2019』は、『Dinalog』展のためにオリジナルで撮り下ろした表紙のビジュアルをはじめ、ユニさんのこれまでの作品が100点以上掲載された熱量たっぷりの一冊です。作品集制作でこだわったことはありますか?

個展『Dinalog』のために制作したビジュアルは、「創作過程の断面を見せる」というコンセプトに基づいています。私がもともと断面フェチなこともあって、さまざまなモノの断面を見せる作業はとても楽しかったです。作品集は、写真集を見るような感覚で楽しんでもらいたくて、制作年順でもなく、解説文も特に記載していません。ページをめくったときに隣り合うビジュアルがバランスよくなるように、かなり時間をかけて製作しました。本を開いたときに見やすいように糸がかり綴じにするなど、装丁自体もこだわったので、ぜひ手にとって見ていただけると嬉しいです。

フルーツを細かくカットしてモザイク状に見せたり、テーブルの上に積み上げた食器で女性の身体に見立てたり。ユニさんはCGを使わず、ほぼ手作業で驚くほどの緻密な世界を構築されますが、手作業にこだわる理由はなんでしょうか?また、思い描くイメージをつくりあげるために心がけていることはなんですか?

現代はCGを使えば、どんなイメージもすぐにつくることができます。でも、スタイリストさんやヘアメイクさん、美術さんといったそれぞれの才能を結集させて手作業でつくりあげるものには、温度感が出ると思うんです。誰も見たことのないものや、人の記憶に残るグラフィックを生み出したいと思っているので、これからも手作業にはこだわりたいと思っています。私はスタッフとイメージを共有するために、絵コンテを詳細に描きます。撮影現場では、そのイメージを超えるアウトプットを目指しています。

ZINE House「LAYERED」(2018年)
「bortssprungt. / Middag」CL/bortssprungt.(2011)

いずれの作品も、どのような制作プロセスを経て完成しているのかが気になります。例えば「LAYERED」(写真上)は、フルーツの一部分がモザイク状になっていますが、いったいどのように作られたのですか?

私は果物や花といった、自然界が創りあげたものの色や形状に惹かれていて、それらの美しさがより魅力的に見えるような表現を追求したのが「LAYERED」です。キウイやパイナップルなど、バナナとリンゴ以外の果物も使用しながら、現場でダイス状にカットしたフルーツをくりぬいたバナナとリンゴに積み上げていきます。すぐに色が変わってしまうので時間との戦いですが、重なり合う色のバランスを調整しながら制作しました。

2019年のラフォーレミュージアム原宿での個展『Dinalog』には、たくさんの人が訪れましたね。ラフや動画などでメイキングを紹介しながら、これまでの仕事を展望する素晴らしい個展となりましたが、振り返ってユニさんにとってどんな体験となりましたか?

2014年にラフォーレミュージアム原宿で一度目の個展を開催した時に、ふだんは見せることのないラフを公開したらすごく反響がよかったんです。なので、二度目の『Dinalog』展では、仕事のメイキングがより伝わるような見せ方をしたいなと思いました。そうすることで、「これはこうやってつくっていたんだ!」という声をたくさんいただき、ビジュアルをつくり込むことの面白さを伝えられたかなと思います。展示空間をつくりあげるプロセス自体も楽しかったので、またいつか新しい形で個展ができたらいいなと思っています。

小さい頃からものづくりは得意でしたか?

そうですね。一人遊びも得意で、カルテやお薬を手作りして「お医者さんごっこ」をしたり、耳かきの綿で家中の指紋を採取して「鑑識ごっこ」をしたり。図鑑を見るのも好きで、お花や昆虫のディティールにうっとりすることも。小学校では工作クラブに入部して、電動のこぎりでものづくりをするのがとても楽しかったです。

複雑かつ精密なアイデアとプロセスを「広告」というビジュアル世界で表現する魅力とはなんでしょうか?

大学時代の広告の授業で、人の動きを止めるほどのインパクトを持つ広告を見た時に衝撃を受けました。一枚のビジュアルで何をどう伝えるのか、制約のある広告制作の仕事に魅力を感じました。私の仕事で一番時間をかける部分が、アイデアを考えることなのですが、広告はクライアントから求められること、時間、予算など制約があります。その制約のなかで、どんな新しいことができるかを毎回必死で考えます。アイデアの泉があって、その泉の中に必死に掴みに行く感じです。客観的に見てつまんないなって思ったら、そのアイデアはすぐに捨てます。制約をクリアし、かつ自分がやりたいこととも繋がった瞬間は嬉しいです。

クライアントをはじめ、広告制作はたくさんのスタッフが関わってつくりあげます。アートディレクターとしてコミュニケーションで大事にしていることはありますか?

ありがたいことに、今一緒にお仕事をしているクリエイターの方々は本当にいい人ばかりなんです。コミュニケーションをする上でのストレスは、ほとんどありません。クライアントの方々を見ていても、社員同士仲が良い会社は生み出す商品も素敵な気がします。撮影現場では長時間一緒に過ごしますし、チームの結束力は本当に大事です。イメージを共有するためにLINEなどで連絡はマメに取るようにしています。私自身はおっとりしているのですが、ビジュアルをつくり込むときには、はっきり意見を言うので厳しい時もあるかもしれません(笑)。でもクリエイティブに妥協はしたくないので、大切なことだと思っています。

最後に、今後手がけてみたい仕事や挑戦したいと思うことがあれば教えてください。

新たなジャンルに挑戦するたび、新しい学びを得て刺激を受けているので、ジャンルの幅はこれからも広げていきたいですね。例えば、昨年初めてコスメブランドのアートディレクションを手がけさせていただいことも新たな経験になりました。ここ数年、アジアなど海外の仕事も少しずつ増えてきたので、それも刺激になっています。ハイブランドのアートワークにも挑戦してみたいですし、今後はもっと海外のお仕事も増やしていけたら嬉しいです。

YUNI YOSHIDA WORKS 2007-2019

¥4,070

本書は、吉田ユニの 2007 年から現在にわたる 12 年の活動を 248 ページに凝縮した作品集です。 日本で最も活躍するアートディレクターの一人として、今までにラフォーレ原宿やルミネのキャンペーンビジュアルや、野田秀樹演出舞台、渡辺直美展のビジュアル、星野源、Chara などの CD・DVD ジャケットなどを手掛けるほか、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO、KIRIN、 LOWRYS FARM などの企業やブランドからのオファーも絶えない吉田ユニ。2019 年 11 月にラフォーレミュージアム原宿で開催された2度目の個展「Dinalog」には、約2週間で 3 万人以上の来場者が訪れました。個展開催に合わせて会場先行発売していた作品集 3000 冊は、会期終了3日前で完売し、また最終日までに約 1500 部の注文受付を取るほどの盛況ぶりとなりました。

彼女の作品は創造力に富み、その独自の視点が鑑賞者に鮮烈なインパクトを残します。全 70 作品は、時に完全合成かと思うほどの驚きを与えながらも、その裏にある細部まで計算されこだわり抜かれた唯一無二の美意識を感じられます。

吉田ユニJapan

1980年生まれ、東京都出身。女子美術大学を卒業後、大貫デザイン、故・野田凪主宰の宇宙カントリーなどを経て独立。ラフォーレ原宿のキャンペーンビジュアルや、野田秀樹演出舞台、渡辺直美展のビジュアル、星野源、CharaなどのCD・DVDジャケットなどを手掛けるほか、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO、KIRIN、LOWRYS FARMなどの企業やブランドからのオファーも絶えない、日本で最も活躍するアートディレクターの一人。雑誌「装苑」でも連載を手がける。2016年東京ADC賞受賞。2014年個展『IMAGINATOMY』、2019年個展『Dinalog』を東京・原宿のラフォーレミュージアムにて開催。作品集『YUNI YOSHIDA WORKS 2007-2019』(GAS As Interface)

Website: http://www.yuni-yoshida.com
Instagram: @yuni_yoshida

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