米林雄一  -継承される媺空への視座-


米林雄一は、その長いキャリアを通じて、”現象として存在する微細なるもの”に鋭敏に反応できる人間の在り方を問う姿勢を貫いています。

微細なるものとは、遥か遠い宇宙空間から信号なのか、地球の内側深くからの信号なのか、身体の奥から滲み出るように発せられるものなのか、、 

氏は言語化・数値化されて科学的に理解されることの範疇を超えた共振、共鳴できる信号に形を与えることを行なってきました。その行為は普遍的な活動であり森羅万象を人間の叡智に昇華する際の原点を探る活動ともいえるでしょう。
自らの身体を受信機として、受け取り、自らの身体を通じ形を探し求め、確実に存在する気配に形を与えた結果としての作品群なのです。

今回の展示は、幾つかの奇遇が重なり実現しました。野尻湖の氏のアトリエを訪ね、ガスボン メタボリズムの空間に作品群を解き放つように設置することを作家に請いました。それは、できたばかりのこの施設に新陳代謝の流れを明確に落とし込みながら、氏に習って微細な何かを受け止めることのできる施設としての姿勢を、この場所が体得するための行為に違いないと信じているからです。

50余年にわたる三脚工場としての役目を終え、新たに再始動した施設に、永年の実践を重ねた彫刻家が微細なるものを大胆に造形し構成した空間を是非体感して下さい。


2022年10月
ガスボン メタボリズム

米林雄一
1942年 東京都生まれ
1964年 金沢美術工芸大学彫刻科 卒業
1966年 東京藝術大学大学院修了
1968年 チェコスロバキア国際彫刻シンポジウム招待
1979年 第14回現代日本美術展で国立国際美術館賞
     国立近代美術館 収蔵
1981年 二紀会35周年記念展で文部大臣賞受賞
1987年 第13回平櫛田中賞受賞
     東京都現代美術館(準備室) 収蔵
1992年 文部省国際芸術研究員として渡米
1999年 第18回現代日本彫刻展(宇部市野外彫刻美術館)に出展
2000年 個展(富山県立近代美術館)
2001年 垂直の時間(東京藝術大学陳列館)
2003年 第20回記念現代日本彫刻展(宇部市野外彫刻美術館)に出展
2007年 東京藝術大学120周年記念日本美術「今」展出品
2008年 退官記念展(東京藝術大学美術館、ミウラート・ヴィレッジ(愛媛県松山市))
2009年 東京藝術大学名誉教授 
2011年 個展 おぶせミュージアム・中島千波館
2018年 個展 飯山市美術館
2022年 個展 ガスボン メタボリズム

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